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東京には夢と歌がある。でも君の来る所じゃない 阿久 悠

入稿終わり。暑いね、死ぬね。

先々月、自分のフリーペーパー作成時にもお世話になったカメラマンのNさんから
電話があって、「どうだい一角の人物になれそうかい」と言われたもんだから、
はいもう絶好調で今度マザー4のEプロをかけて糸井君とコンペします来年には
HAYASHIZM(林イズム)って服飾ブランドを展開しますって調子に乗ったら、
ちょっと旅行がてらに仕事をしないかと誘われる。

どうやらとある旅行会社の広告作成の為、3日間旅館を数件巡って色々やる為の
ライターが不足しているらしく、タッグを組もうぜマイトってな話。
相変わらずライター業は日進月歩状態、これだけで飯を食うには後1万年ぐらい
かかりそうなので快諾。営業さん含め3人で茨城へ。

最初に取材した旅館は温泉がとても有名な所らしく、岩を刳り貫いてそこに
お湯入れてるし景色はいいしうわすげえって感動したのだけど、案内役の仲居さんが
とても嫌な方で、終始はいはいさっさと済ましちゃってね俺は忙しいんだからオーラを
醸し出しており、でも自分は大人なので、効能の部分に"頭が突然禿る"と
鉛筆で殴り書きしてすぐに消し、うふふと根暗に笑って許す。

その他、料理も旨く、木造式の景観は情緒があり、仲居は禿頭と、
総じてとても素晴らしいのだけど、これら全て詰め込んでライティングすると、
結局何が良いのかが霞んでしまう。
パノラマ写真が撮りたくてカメラのシャッターを押しながら一回転するような。
と、言いつつも自分はかなりの頻度でやってしまうのだけど。

僕の場合、まず、見たもの感じた事を阿呆のように箇条書きして、
その中から主軸にして欲しい、したいポイントを探し、主軸がブレず、
くっきりと目立つようにガリガリと削っていく。
こうやって書くととても簡単そうだけど、とても難しい。いやほんとに。
そうして研磨された文章は32カラットダイアモンドの如き光を発するはずなのに、
何故か僕のそれはあまり光らなかったりする。まぁいいのさ。
とにかく、伝えたい事を出来る限りシンプルに。

で、これはライターに限った話じゃないけど、難解なのはその後の、
先方の了承を得る、という部分。
例えば上記、先方の伝えたい部分と自分のそれ双方が合致した場合、
比較的スムーズに進行して了承に至るパターンが多いのだけれど、
合致しない、または、あれもこれも載せてくれとねだられた場合、よく拗れる。
特に困るのは後者で、例えば500文字分スペースがあり、そこにビッシリと
当旅館の魅力を書いた所で、上述の通り、メイン部分が霞んでしまうし、
何より大抵の人は500文字もあったら面倒くさくて読んもらえないのが常。
司馬遼太郎が「以下、無用の事ながら当旅館について書き止めて候」
なんつって書くのなら話は別だけれど。
けれど当然、決定権は先方にあるので、じゃあこれだけはこうやって
入れましょうかへへってなやり取りをしたり。

ライティングってのはコミュニケーションに似ているな、と思う。
とても難しいけれど、嫌いじゃないのだ。

夜、コンビニで買ったししゃもを、これは蝦夷産ですかなとか言いながら肴にして
ウィスキーを飲み、あんま酒に強くないもんだから酷く酔ってフラフラしていたら
花火が上がり、今日は地元のお祭りだと教えられる。
Nさんは花火に神速で反応、職業病なのでカメラと三脚を持って
3階の窓から飛び降りてしまう。酔っていたので曖昧だけど。
連れ添いの営業さんは彼女に振られた直後らしく、「去年は彼女と隅田川の花火
見たッス。切ないッス」って調子で酩酊を極めて就寝。
正体のない僕は神社に出向いて別にお願いする事もなかったので適当に拍手だけ打つ。

地元の悪そうな若者がぞろぞろと出店を徘徊。色めき立った浴衣姿の少女が
金魚を掬う。何故かサバンナを連想とさせる。
怪しい人物がいるな、と思ったら満面の笑みで花火を撮影しているNさんだった。
花火がぱーんと弾けて、僕は夏が来やがったと確信。
漲る夏パワーで残り2日の業務をそつ無くこなし、カワラなんとかって花を買って家に帰る。

後日、仮稿を見たら温泉の写真が素晴らしくて泣きそうになった。
相乗効果で文章もそれっぽくなってる気がして嬉しい。
やっぱり書くっちゅーのは楽しい。
大袈裟だけどちょっとした生き甲斐みたいなもんなのかもしれない。
それだけさ。下手でもいいさ。
ハハハ。

by noritama_LOW | 2008-08-05 15:20 | わりと日記